消化器内科
旅行者下痢症
発展途上国などに旅行した際に発症する下痢です。
典型的な経過では海外旅行先に到着して数日以内に激しい下痢が出現します。
帰国後に発症する場合もあります。
ある統計では、毎年海外旅行者の20-50%、1,000万人が下痢をしているといわれています。
旅行先でリスクの高い地域は、ラテンアメリカ、アフリカ、中東、アジアの発展途上国です。
また、発症しやすいのは10代後半の若者、免疫抑制者、炎症性腸疾患や糖尿病の人、胃炎や逆流性食道炎で処方される胃酸を抑える薬を内服している人(酸が少ないので菌が胃の中で殺菌されにくい)などです。
予防するためには、食べ物や飲み物に対する注意が必要です。
屋台や非衛生的な店での飲食を避ける、十分に火の通っていない肉や魚介類を避ける、皮をむかずに果物や野菜を食べない、井戸水はもちろん水道水や氷にも気をつけることなどです。
感染症の場合、もっとも多い原因が腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigent E coli:ETEC)です。
この大腸菌はコレラ毒素様の毒素を産生するため、激しい下痢の原因となります。
ニューキノロン系の抗菌薬が有効な場合がありますが、東南アジアなどではこの種の抗菌薬に対する耐性菌が増えています。
一方、単純な感染性腸炎の場合には抗菌薬を使わなくても軽快することが多いと考えられます。
また、必ずしも感染ばかりでなく、旅行という非日常のイベントに伴う疲労や精神的不安、食事の違いによる胃腸障害などが重なって下痢をすることもあります。